QuarkXPressは、かつては業界のデファクトスタンダードだったこともある、DTPアプリの古豪。僕も出版社に勤務していた頃(四半世紀近く前)に、使っていた経験があります。当時は確か、高額なバージョンアップ料金にユーザーが躊躇しているところに、日本の出版業界にアジャストする情熱を持っていたアドビのInDesignが現れて、だんだんとその地位を奪われていったんでしたっけ(うろ覚え)。

 しかし時は過ぎ、アドビさんもサブスクしかなくなり、しかも円安の影響もあって価格は上昇の一途。ふと「他にDTPアプリないの?」ぐらいのことは頭によぎります。しかし、期待の星であるAffinity Publisherは、残念ながら現時点では縦書きにすら対応しておらず、どうやら開発はされているようなのですが、今日まで全く音沙汰がありません。そんなとき、「あれ? Quarkは?」と思い立ったというわけです。

 そのQuark、2025という最新版があるらしいことは分かりましたが、輸入代理店のページにも、商品紹介すらありません。イーロンさんご自慢のGrogでX上をリサーチしたところ、「日本人ユーザーの関与を示す明確な証拠は確認できませんでした」と返答される始末。日本市場での影が、限りなく薄くなってしまっているような現状なのです。じゃあちょっと、試用版を入れてみようじゃないのと、突撃取材を敢行した次第。

 さて。この試用版、7日間しか使えない上に、試用にはアカウント登録とパスワードの設定が必要。しかも試用中はプロジェクトの保存すら出来ません。このガードが異様に厳重な感じは、「Quarkくん、相変わらずだねぇ」と思わずにはいられませんねぇ……。

 そんなこんなで、ようやく立ち上げたQuarkXPress 2025、スクショをご覧いただければ分かりますように、ちゃんと日本語に対応しておりました。まぁ、プロジェクトの保存すら出来ないとなると、あまり難しいことは試せませんが、試用してみて確認できたことなどを、以下に列記します。

  • 日本語に対応(メニューはすべて日本語)縦書きに対応。ルビの機能などもあり
  • Morisawa Fonts、Adobe Fontsの動作も確認(ただし、Adobe Fontsは「アドビアプリと他社アプリで使用」となっているもののみ)
  • PSDファイルが直に貼り付けられるようになっている
  • 試用版では試せなかったが、PDFへの書き出しも出来るっぽい
  • ルビに自動入力機能がある(InDesignにはない機能。残念ながらたまに間違いますが……)
  • 相変わらず、字詰行数の概念はない(版面にグリッドを表示する機能があるみたいですが)
  • InDesignのデータ(IDML)が開けるが、あちこち化けてしまう上、縦組みのものは横組みになってしまう
  • 旧QuarkXPressで作成したデータを開いてみようとしたが、残念ながら開けなかった(InDesignなら開けるのに……)
  •  

     ……と、簡単に試用してみた印象は「良くも悪くも相変わらず」でした。一応日本語に対応しているとはいえ、日本語に関しての機能が昔とあまり変わっておらず、それで永久ライセンス版が約10万円となると、正直ちょっと手が出しにくいですね。また、旧バージョンのデータがそのままでは開かない(以前は「QuarkXPress Document Converter」なるものが配布されていたようですが)のも残念で、それらのことを考え合わせると、そりゃあ影が薄くなるわけだと、妙に納得してしまいました。

     現状では、「Quarkの方が操作が慣れている」方や、「同人誌など非商業系出版物を頻繁に作る方で、どうしてもサブスクが嫌」という事情のある方など、そういうニッチなニーズしか拾えないでしょう。せっかく日本語版アプリを用意しているのに、これでは報われません。価格面か機能面か、どちらかだけでも頑張っていただきたいものです。

     以上、簡単ではございますが、QuarkXPress2025の試用リポートでした。

    (※内容はすべて原稿執筆時〈2025年3月現在〉のものです)